既存建築物の省エネ届出書は増改築の省エネ適判で使えるか?

2024年度の増築にかかる省エネ法の手続きやクリアが必要な省エネの基準値は既存部分の建築時期や増築部分の面積の割合で決まります。

詳しく知りたいという方はこちらで詳しく説明しておりますので、一度ご確認ください。

建築研究所から出ている増築パターンのケースⅢに該当する場合、既存部分で省エネの届け出がされており、増築のタイミングで省エネ適判が必要になることがあります。

こういったケースが起きる理由としては、省エネ適判の規模が段階的に引き上げられたことにあります。

非住宅は2024年現在、300㎡以上の建物が省エネ適判に該当します。

しかし、2020年時点では2,000以上の建物が省エネ適判の対象でした。

つまり、今建てるには最初から省エネ適判が必要になる建物が、当時は省エネの届け出だけで良かったため、省エネ基準をクリアしていないものや、民間の審査機関で審査を受けていない建物が存在しているという状況が起きているという事なのです。

今回のケースもその一つで、既存部分には省エネ届出とその計算書があるのですが、審査機関で審査を受けていないため、当時の計算結果をそのまま使えないということが実際の現場で発生しました。

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物件概要

物件概要
  • 用途:有料老人ホーム
  • 既存部:1550㎡ 2020年9月 竣工
  • 増築部:1087㎡ 2024年8月 着工予定
  • 既存部分デフォルト値:1.1
  • 省エネ基準:1.0

上記の条件の物件がありました。

これは建築研究所から出ている増築パターンのケースⅢに該当する物件です。

既存部分は300㎡を超え、2,000㎡未満だったので、当時は省エネの届け出を所管行政庁に提出していました。

受付印のある届出書も計算書、図面も残っていましたが、今回の増築では省エネ適判に該当し、民間の審査機関に確認申請と共に省エネ適判を提出するため、当時の計算結果を既存部分で使用することが出来ないとなりました。

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質問内容

以下が実際に私の方から民間の審査機関に送った質問の内容です。

増改築の省エネ適判の案件で
既存部分に省エネ届出の提出履歴があります。

この場合、
既存部分は省エネ届出の計算書や
計算結果を使用しても良いでしょうか?

使用できる場合、
既存部分で申請時に提出する資料としては 何が必要でしょうか?

審査機関からの回答

審査機関の担当者からの回答は以下のようなものでした。

既存部分の計算結果を使用することは法律上可能です。

しかし、従前が届出の場合、
弊社にて審査を行っていないためBEI値を使用する場合は
今回の申請で既存部分の審査が必要
となります。

自社で審査や検査を行っていないものは保証できないというのは確かにそうかも知れませんね。

合わせてどのように手続きをするのが良いかも教えていただきました。

今回のケースの場合の手続き

  1. 既存部分BEIにデフォルト値(1.1)を使用し計算
    • 今回の場合BEI基準値は新基準ではなく1.0となります。
    • 既存部分は完了検査の対象にはなりません。
    • 【必要図書】既存部分の求積図・平面図・立面図のみで可
  2. 既存部分を含めて再計算
    • 今回の場合BEI基準値は新基準ではなく1.0となります。
    • この場合完了検査時に既存部分についても検査対象となります。
    • 【必要図書】既存部分の図書一式
  3. 今回の増築の省エネ適判を既存の審査を行った行政庁に提出
    • 既存部分は従前の計算書を使用
    • 今回の場合BEI基準値は新基準ではなく1.0となります。
    • 既存部分が完了検査の対象になるかは行政に確認が必要
    • 【必要図書】受付印のある届出書一式(既存部分の計算書含む)※詳しくは提出する行政庁への確認が必要

上記のいずれかで進めることになるようです。

まとめ

まとめ
  • 行政で審査した省エネ計算書であっても民間で使う場合はもう一度民間で審査する必要がある
  • 既存部分を民間で省エネ計算書の再審査をした場合や最初から計算し直した場合には既存部分も完了検査が必要になる

手間や費用を考えると既存部分の計算結果は規定値を用いて、増築部分の省エネ性能を上げるなどして全体の省エネ基準をクリアするのがベストのようですね。

ただ、規定値を用いる計算では面積按分で計算結果を足し合わせますので、増築部分が全体の面積に対して小さいとこの方法でクリアするのはかなり困難になります。

太陽光を乗せて無理やり計算結果をよくするという方法も考えないといけないかもしれません。

他には2025年度に入れば、既存部分は除外され、増築部分だけで判断されますので、建築計画のリスケなどで調整するという方法も手段としては考えられます。

増築の省エネ法に関してはこちらの記事で詳しく解説していますので合わせてご確認いただくことで、より理解が深まると思います。

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