省エネ計算を行う際に、住宅と非住宅とでは計算方法や評価対象が全く異なります。
ざっくりというと、住宅は断熱性能と一次エネルギー消費量の両方を評価・計算するのに対して非住宅は一次エネルギー消費量のみの計算で良いとされています。
住宅には断熱等級と一次エネルギー消費量等級が設定されていますが、非住宅では一次エネルギー消費量等級の基準のみとなります。
省エネ等級に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
計算対象になる設備(モデル建物法)
非住宅では断熱等級の計算は行わないと先述しましたが、外皮の仕様の入力は行います。
直接省エネ計算の結果に影響するというよりは、空調の能力を求める際に必要になるもので、断熱性能がどれくらいだったという結果や等級の評価は行われません。
また非住宅の一次エネルギー消費量の計算でよく用いられるモデル建物法は用途ごとに計算の対象となる部屋が異なり、さらに部屋ごとで入力しなければいけない設備の種類が異なります。
それをまとめたものが下記の一覧表になります。
例えば事務所用途であれば、入力が必要な設備は外皮、空調、換気、照明、給湯、昇降機、太陽光、コージェネとなります。
外皮の入力が必要な場所は外気に接する部位で地盤に接する外壁などは対象外になります。
空調 | 全ての部屋で入力が必要 |
換気 | 機械室、便所、厨房、駐車場で入力が必要 |
照明 | 事務室のみ入力が必要 |
給湯 | 浴室、厨房で入力が必要 |
昇降機 | 全て対象 |
太陽光 | 全て対象 |
太陽光については少しでも売電を行う場合、省エネ計算に含めることが出来ないのでこれも注意が必要です。
この様にしてモデル建物法の計算では各用途によってどの部屋の何の設備を入力しなさいという事が決められています。
計算に入力できない設備の影響
用途ごとに計算対象となる部屋と、その部屋のどの機器を計算するのかという事が決められているため、設置されている設備でも計算には使われない機器というものが発生します。
その影響としては大きく下記の2つが考えられます。
前者は完了検査を受ける前の変更申請の手間や審査にかかる時間に影響し、後者はZEBや高い省エネ性能を目指したり、省エネ基準を下げる検討をする際に影響するものです。
計算対象が少なければ、変更申請が必要になる確率も下がり、現場の変更内容の管理工数や手間も少なくなります。
審査で見る箇所も少なくなれば、審査にかかる時間も短くなるので、完了検査前も気持ちの余裕が生まれます。
別の記事で詳しく解説していますが、モデル建物法で省エネ適判を行う理由も1つここにあります。
計算対象が少ないことのデメリットとしては、限られた機器の中で数値を下げないと行けなくなることです。
検討無しでクリアしていれば問題ありませんし、クリアしていなくても省エネ適判であれば太陽光をのせられれば数値を下げることができます。
しかし、ZEBは太陽光無しでクリアしなければならない基準がありますので、実装している設備の省エネ性能を上げて数値を下げなければなりません。
そういった時に、対象となる機器や計算対象となる部屋が少ないと検討の幅が狭くなり、クリアさせることが難しくなります。
こちらも「ZEBを標準入力法で計算する理由」という記事で解説しているのでご覧ください。