【24年法改正】省エネ基準が上がった建物用途と対策

カーボンニュートラルを目指した政府の施作の中で、2024年4月に2,000㎡以上の非住宅で省エネ基準の引き上げが実施されました。

建築物省エネ法は建物を大規模建築物(2,000㎡以上)、中規模建築物(300㎡以上)、小規模建築物(10㎡以上)に分類して段階的省エネ性能の基準や法規を段階的に整備してきました。

2024年4月現在、省エネ法は300㎡以上の建物に対して、非住宅では省エネ基準適合義務、住宅では所管行政庁への届出義務を課しています。

今回の省エネ基準の引き上げは、2,000㎡以上の非住宅に限定した改正になっています。

省エネ基準の引き上げに関するパンフレットが国交相から出ていたのでリンクを貼っておきます。

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001519932.pdf

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この記事で解決できること

  • どの用途で省エネ基準がどれくらい上がったのか
  • 省エネ計算の結果を良くするための設備ごとの対策
  • 非住宅で断熱性能がそこまで重要ではない理由
  • 省エネ基準は最終的にどこまで上がるのか

2024年省エネ法改正の概要

2024年4月の法改正では2,000㎡以上の非住宅に対して、省エネ基準をBEI1.0から用途に応じて15%〜25%引き上げました。

この動きは段階的に、中規模建築物、小規模建築物にまで広がって行き、2030年には現在のZEBで設定されているBEI0.5まで引き上げられます。

これは非住宅に限った話ではなく、住宅も2025年の省エネ基準適合義務化を経て、ZEH水準までの省エネ基準引き上げが予定されています。

今や建築士の間で知らない人はいない、省エネ法ですが、情報収集がままならず、日々の業務の中で自分の建物が省エネ法に該当していることを見落として、確認申請下付直前に慌てて省エネ計算に取り掛かる、外注を探すといった動きが見受けられます。

省エネ計算の代行会社も省エネ計算を審査する審査機関も人手不足や急激な業務増加で大至急の対応ができなくなっています。

お店のオープンや工事業者の手待ち、計算費用や審査手数料など施主の負担増で信用を失わないように常日頃からこまめに情報収集をしたり、信頼できる代行会社を見つけておきましょう。

省エネ基準が上がる建物と新基準

今回省エネ基準の上がる建物は2,000㎡以上の非住宅です。

2,000㎡未満の非住宅には影響ありません。

住宅も今年度の法改正に関しては、非住宅を含めた省エネ性能の表示制度が強化されるにとどまりました。

省エネ性能の表示制度についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

新しい省エネ基準

現在、省エネ基準適合義務で用いられている省エネ基準はBEI1.0です。

用途省エネ基準(BEI)
全用途1.0

そして今回、新たに設定された省エネ基準が用途ごとに、工場等でBEI0.75、事務所等・ホテル等・百貨店等及び学校等でBEI0.8、病院等・飲食店等及び集会場等でBEI0.85となっています。

用途省エネ基準(BEI)
工場等0.75
事務所等0.8
ホテル等0.8
百貨店等0.8
学校等0.8
病院等0.8
飲食店等0.85
集会場等0.85

平成30年〜令和2年度の期間を対象にした国交相の調べを見ると

  • 工場等の新しい省エネ基準となるBEI0.75をクリアしている建物の割合は約90%
  • 百貨店等、学校等、事務所等、ホテル等で新基準BEI0.8をクリアした建物は約60〜80%
  • 病院等、飲食店等、集会所等で新基準BEI0.85をクリアした建物は約40%〜60%

これは、確認申請とともに提出された省エネ適判で、全地域における非住宅の新築で2,000㎡以上、単一用途の建物から算出された割合になっています。

工場等については、比較的高い割合ですでに新しい省エネ基準をクリアできています。

逆に、工場等以外の用途では、新しい省エネ基準をクリアできているのがほんの半分程度となっていることから、省エネ設計を見直さなければいけなくなるでしょう。

建物の省エネ性能を上げるにはどうしたらいいか

用途ごとに省エネ基準を変えている理由には、用途によって計算対象となる室や電気、設備が異なるためです。

例えば、工場や倉庫用途では倉庫部、荷捌き場、駐車場が計算対象の室に設定されており、作業場などは計算対象になりません。

さらに工場や倉庫では計算対象とされている主な設備は照明だけです。

換気、空調、給湯が実装されていても計算する必要はありません。

断熱性能に影響する外皮の計算も必要ないのです。

工場だから、倉庫だからという理由で断熱性能を気にされて問い合わせをいただく方も多いので、少し触れおきました。

倉庫に限っては常温倉庫に該当すれば、省エネ法そのものが適用されません。

確認申請時に省エネ計算は不要ということになります。

ちなみに断熱性能が影響するのは、空調設備が計算の対象とされているのみです。

空調の能力を抑えるために必要なので、断熱材の厚みを増やすだけでは省エネ計算の結果は良くなりません。

空調の負荷計算も一緒に行うことで初めて断熱材を増やした効果が計算書に反映されますので、こちらも合わせて覚えておきましょう。

機器ごとの対策を簡単に表にしましたので設計の参考にしてみてください。

設備対策
照明・LEDに変更する
・制御の付いている機器に変更する
・照明の数を減らす
換気・換気高効率モーターやインバーターを採用する
・風量制御を採用する
空調・外皮性能を上げて負荷計算で能力を下げる
・設計の余裕度を減らす
・全熱交換器を導入する
給湯・給湯熱源機種を高効率のものに変える
・ガス給湯器にする

これでもダメなら、、、と言っていいのかわかりませんが、究極には太陽光発電などの再生可能エネルギーの力を借りて計算結果を下げるということも可能です。

ただ太陽光発電を使ってBEIを下げるという手法は省エネ適判に限って使える手段で、ZEBを取るための手法としては使えませんのでご注意ください。

ZEBは太陽光なしでもBEIが0.5以下になっていないと認定されません。

まとめ

冒頭でも少し触れましたが、2024年の省エネ法の改正は2050年のカーボンニュートラルに向けた流れの一部で、今後数年に渡り省エネ法は改正を続けます。

  • 2025年 住宅を含めたすべての規模の建物が省エネ適判に変わる
  • 2026年 300㎡以上の非住宅で省エネ基準引き上げ(2024年の内容が中規模非住宅建築物に適用されます)
  • 2030年 住宅・非住宅の省エネ基準をZEH・ZEBレベルに引き上げ

その場しのぎ的にこなす対策ではなく、先を見据えた情報収集と設計思想の再定義を求められているのかも知れません。

設計仕様がまだ省エネ基準をクリアできていないのであれば、今年度のできるだけ早い段階から省エネ基準をクリアできる仕様に見直しておきましょう。

まだ、間に合います。

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