3分でわかる!2024年「建築物の省エネ性能表示制度」の仕組み

2024年4月から始まった建築物の省エネ表示制度、みなさんはもう対応を進められていますか?

設計事務所の方からは

「これは省エネ基準をクリアしろということなの?」
「確認申請と関連するの?」
「表示しなかったら罰則があるの?」

と言った質問をたくさんいただきました。

建築物の省エネ性能表示制度が何のための制度で、どう対応していけばいいのかを簡単にまとめて解説してきたいと思います。

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この記事で解決できること

  • 省エネ基準をクリアしなくても表示できるのか?
  • 表示しなかった時に罰則はあるの?
  • 既存の建物でも表示ラベルは発行できるの?
  • 第三者評価ラベルはどうやって発行するの?
  • 自己評価ラベルはどうやって発行するの?
  • 建築物の省エネ性能表示制度の目的は?

建築物の省エネ性能表示制度とは

建築物の省エネ性能表示制度というのは、かんたんにいうと消費者が建物を購入したり借りたりする時に、建物の省エネ性能を簡単に比べたりできるようにするための表示制度です。

2024年4月以降、新築の建物を販売・賃貸のための広告などには省エネ性能の表示ラベルを載せることが必要になります。

広告の種類には新聞・雑誌広告、チラシ、パンフレット、インターネット広告などが対象になります。

今回始まった制度では新築の建物を対象としているため、既存の建物には適用されません。

既存の建物は対象になっていませんが、表示するように推奨はされていますので、任意で省エネ計算を行うなどして表示ラベルを発行することは可能です。

表示ラベルには断熱性能、一次エネルギー消費量、太陽光の有無といった建物の性能が記載されています。

出典:国土交通省 建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度

またこの取り組みは2030年のカーボンニュートラルを見据えたもので、消費者に建物の省エネ性能に関心を持ってもらうという目的も持っています。

直近では2025年の省エネ法改正が控えており、そこではついに住宅や小規模建築物を含めた全ての建物で省エネ基準への適合が義務付けられます。

つまり、省エネ基準をクリアしていない建物は、建てられなくなります。

国交相の公式サイトも開設されています。

建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度|国土交通省
「省エネ性能表⽰制度」とは販売・賃貸事業者が建築物の省エネ性能を広告等に表⽰することで、消費者等が建築物を購⼊・賃借する際に、省エネ性能の把握や⽐較ができるようにする制度です。

表示ラベルの発行について

建築物の省エネ性能表示制度の表示ラベルは大きく分けて「自己評価ラベル」と「第三者評価ラベル」の2種類があります。

どっちを取ったらいいかは、さまざまな要件から慎重に考えていく必要がありますが、信用度の点から言えば、第三者評価ラベルを取得するのが良いと思います。

ただ、省エネ計算や審査にはお金も時間もかかるため、予算や時間との相談も必要になってきます。

それ以外にも施主の置かれる市場で、他社と差別化を図るにはどうしたらいいのかまでを含めて検討を進めることで、施主や設計を担当した設計事務所もより多くのリターンを得られる可能性もあります。

自己評価ラベルの発行について

自己評価ラベルは一般社団法人住宅性能評価・表示協会のWEBサイトから発行できます。

BELS - 省エネ性能ラベル等作成プログラム(自己評価)

自己評価ラベルの発行は詳細な計算を行う性能基準簡単な項目を入力するだけで発行できる仕様基準の2通りの発行方法があります。

性能基準は電気や設備、外皮など細かな情報を入力して計算する必要があるため、手間や専門知識が必要になります。

仕様基準は建物の概要に近い簡単な情報入力だけで発行できますが、その分結果は悪く出てしまいますし、正確ではありません。

第三者評価ラベルの発行について

第三者評価ラベルを取得するにはBELSの審査を行える民間の審査機関に省エネ計算書を提出する必要があります。

計算に使用した設計図書や計算に使用した数値をどこから拾ったかを示した根拠図面が必要になります。

民間の審査機関では専門家目線で細かくチェックが行われ、質疑が上がります。

省エネ計算の経験が浅いと、質疑の内容が専門的で理解できないこともあります。

そもそも省エネ計算を自分で勉強してやるのか、外注に任せるのかもこの段階では検討が必要です。

省エネ計算は設備設計の会社が、設備設計を一緒に受けていることがよくありますが、設備設計を依頼しない場合は受けてくれないことがあります。

また省エネ計算の専門家ではないので、対応が遅くなり、建築計画自体に悪影響となるケースもあります。

できれば気軽に省エネ設計の相談ができて、ZEBやZEHといった高い省エネ性能の検討までやってくれる、省エネ計算の専門会社に依頼するのが安心してプロジェクトを進めるポイントになります。

省エネ適判は第三者評価になる?

省エネ適判は確認申請と一緒に審査機関で審査を受けているので、第三者評価になるように思えますが、

実は省エネ適判が降りていても、BELSを取得していないと自己評価扱いとなってしまい、第三者評価の信頼性を謳うことができません。

ただ、BELS自体は省エネ適判の判定書があれば、すぐにBELSの評価書が発行されるのでとくに問題はないと思います。

省エネ基準をクリアしていないとどうなる?

2024年現在では戸建て住宅や共同住宅の省エネ基準適合が義務ではないため、省エネ基準に適合していない建物が建つことがあります。

その場合でも建築物の省エネ性能表示制度にはかかってくるため、どうしたらいいのか?、どうなるのか?といった質問をいただきます。

建築物の省エネ性能表示制度では省エネ基準をクリアしていない場合、表示ラベルが「星無し」で発行されます。

来年度の省エネ基準適合義務化や長期的なカーボンニュートラルに向けた流れを考えると、「星無しで表示したくないな」という心理に働きかけるような仕組みになっているなと感じました。

既存建物でもラベルは発行できる?

既存建物でも建築物の省エネ性能表示制度の表示ラベルは発行可能です。

制度の中で既存建物でも表示することが推奨されいることや、第三者評価で使うBELSも既存建物で取得することが可能になっています。

BELSの審査を行うための計算書を作成したり、根拠図面を作るにはCADデータが必要になります。

既存建物が古いと、CAD図面がないことがあるのでCADデータ図面が用意できるかの確認も合わせて行っておきましょう。

現状の省エネ性能を把握する目的や省エネ改修などを行う目的などにも利用されるのかなと思います。

また、今年度新築した建物も建築物の省エネ性能表示制度でラベル表示したのち、再販や再賃貸契約を行う場合、現状に沿った再計算と再表示が必要になります。

再販や再賃貸契約時に建物の仕様が変わっているのに、表示ラベルは当時のままというのは虚偽の表示にもなりかねませんので注意が必要です。

建築物の省エネ性能表示制度を怠った時の罰則は?

建築物の省エネ性能表示制度を行わなかったら、勧告が行われたのちに公開されるとなっています。

罰金などは無いようですが、信用問題になりますので注意しましょう。

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