気候風土適応住宅も省エネ適判が必要になる?2025年4月の省エネ法改正

気候風土適応住宅も省エネ適判が必要になる?2025年4月の省エネ法改正

今回は気候風土適応住宅の省エネ法がどういう仕組みになっているのか簡単に解説していきたいと思います。

結論から言ってしまうと、気候風土適応住宅も一般的な戸建住宅や共同住宅と同じ様に建築物省エネ法の対象になります。

ただし、令和元年の国土交通省告示第786号が定められたことにより、「気候風土適応住宅の合理化措置」が受けられるようになりました。

これらを踏まえて気候風土適応住宅では、省エネ計算や省エネ法の対応をどのように行えばよいかを見ていきましょう。

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気候風土適応住宅とは

まず、そもそも気候風土適応住宅とはなにかのおさらいをしておきます。

気候風土適応住宅とは地域の気候や風土に応じた様式や形態、空間構成、構工法、材料、生産体制、景観形成や住まい方などの特徴を備えている住宅で、外皮基準に適合させることが困難であると国土交通大臣が定める基準に適合する住宅の事をいいます。

告示第786号第1項第一号の「国が定める基準」は次の通りです。

告示第786号第1項第一号 国が定める基準

1 建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令附則第二条に規定する地域の気候及び風土に応じた住宅であることにより同令第一条第一項第二号イに適合させることが困難であるものとして国土交通大臣が定める基準は、次の各号に掲げる要件に適合するものであることとする。

 一 次のイからハまでのいずれかに該当するものであること
  イ 外壁の過半が両面を真壁造とした土塗壁であること
  ロ 外壁が両面を真壁造とした落とし込み板壁であること
  ハ 次の(1)及び(2)に該当すること
   (1)外壁について次の(i)から(iii)までのいずれかに該当すること
     (ⅰ)片面を真壁造とした土塗壁であること
     (ⅱ)片面を真壁造とした落とし込み板壁
     (ⅲ)過半が両面を真壁造とした落とし込み板壁であること

   (2)屋根、床及び窓について、次の(i)から(iii)までのいずれかに該当すること
     (ⅰ)屋根が化粧野地天井であること
     (ⅱ)床が板張りであること
     (ⅲ)窓の過半が地場製作の木製建具であること

気候風土適応住宅の合理化措置とは

気候風土適応住宅には省エネ計算を行う上で、合理化措置というものが設けられています。

特異な仕組みや工法であるため、現行の省エネ計算で評価するのが困難と判断されています。

そのため、外皮計算、一次エネルギー消費量の計算それぞれに合理化措置が設けられています。

気候風土適応住宅の外皮計算

「先述の気候風土適応住宅とは」で下記の様に定義がされています。

地域の気候や風土に応じた様式や形態、空間構成、構工法、材料、生産体制、景観形成や住まい方などの特徴を備えている住宅で、外皮基準に適合させることが困難であると国土交通大臣が定める基準に適合する住宅

さらに注目して欲しいのは「外皮基準に適合させることが困難」というところです。

壁や建具の仕組み上、現行の省エネ計算方法では正確にこれを評価することができないということになります。

そのため、この合理化措置というものが用意されており、気候風土適応住宅を計算する際に、外皮基準への適合は除外される様になっています。

気候風土適応住宅は外皮基準への適合は除外される

気候風土適応住宅の一次エネルギー消費量計算

気候風土適応住宅では、外皮基準への適合が除外されますが、一次エネルギー消費量の計算についても、2つの評価パターンから設計者が選択できる様な仕組みになっています。

1つは普通に使っている設備の能力を入力して計算する方法です。

一次エネルギー消費量の計算でも空調が入る部屋では外皮性能が空調の能力に影響を与えるため、こちらの方法で計算を行う場合にはこれ用の外皮計算を行う必要が出てきます。

もう1つは、仕様基準を用いた方法です。こちらを使えば、外皮計算は不要になりますが、実際の設備の能力を計算するよりも厳し目の結果ができる様になっているので少し注意が必要です。

気候風土適応住宅やその省エネ計算についてもっと詳しく知りたいという方は、一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC)より「気候風土適応住宅」の解説が出ていますのでこちらを参照ください。

https://www.jsbc.or.jp/document/files/house_kikou_kaisetsu.pdf

気候風土適応住宅の一次エネルギー消費量の評価は次の2パターンから選ぶことができる

  1. 実装される設備の能力を入力して計算する
  2. 仕様基準を使って評価をする(計算なし)

2024年現在の省エネ法における気候風土適応住宅の扱い

気候風土適応住宅では合理化措置の内容を見てきましたが、これはあくまでも計算を行う上での合理化措置であり、省エネ法の適用除外を意味するものではありません。

2024年現在の省エネ法では気候風土適応住宅も省エネ法の手続きを行わなければいけません。

一般住宅と同様に、開放部分を除いた延床面積が300㎡以上になれば、所管行政庁への届出が必要です。

また、300㎡未満の場合でも説明義務が適用されますので、建築主への省エネ住宅がどの様なものかを説明し、省エネ基準などへ適合させたいかどうかの確認を行う必要があります。

省エネ基準への適合を望まれた場合には、気候風土適応住宅の合理化措置の内容に基づき省エネ計算を行う必要があります。

2025年省エネ法改正後の気候風土適応住宅の扱い

では、2025年4月に行われる予定の省エネ法改正後に、気候風土適応住宅はどの様な対応を求められるのでしょうか?

2025年の省エネ法改正では全ての規模の建物において、省エネ基準への適合が義務化されます。

全ての建物で省エネ適判が必要になるというのは間違った解釈です。

まだ間違ったまま理解している様であれば、以下の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。

気候風土適応住宅も、同じ様に省エネ基準への適合が義務化されます。

法改正前と同じ様に、合理化措置は適用されるため、外皮基準への適合は除外され、一次エネルギー消費量の計算は2つの評価パターンから選択が可能です。

まとめ

気候風土適応住宅にも省エネ法は適用され、独自の方法で省エネ計算が必要なのですね。

ひとことに気候風土適応住宅と言っても、実際にはさまざまな仕組み、工法の建物がありますので一括りにはできません。

しかし、消費者が住宅を購入するときに同じ物差しで評価された建物は比べやすい。

省エネ法改正はそこに向けた取り組みだと思うので、建物ごとの特徴が加味できる様な、実態にあった法整備が今後行われていく様になるといいなと思っています。

まとめ
  • 気候風土適応住宅も省エネ法が適用される
  • 気候風土適応住宅の省エネ計算では外皮基準への適合は除外される
  • 気候風土適応住宅の一次エネルギー消費量の評価は計算するパターンと仕様基準で評価する方法から選択できる
  • 気候風土適応住宅も2025年4月の省エネ法改正で省エネ基準への適合が義務化される
  • 2025年4月の省エネ法改正は全ての建物で省エネ適判が必要になるというのは間違い

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